教わった直後は解けるのに問題が変わると解けない小学生へ
この記事の内容
先生に解き方を教えてもらった直後は、同じような問題を解ける。
ところが、翌日になると解き方を忘れている。
数字や聞き方が少し変わるだけで、習った考え方を使えない。
このような子は、決して少なくありません。
原因を「復習不足」「記憶力が弱い」で終わらせると、本当に必要な指導が見えなくなります。
例題を見たときに、何を理解し、何を覚え、次の問題へ何を持っていくのか。その思考を具体的に教えられていないことがあるからです。
できる子が例題を見るときに無意識に行っていることと、問題が変わっても解けるようになるための例題の学び方を、ときわの塾が解説します。

「解き方を教えてもらった直後はできるのに、一人になると解けません」
「昨日できた問題を、今日はすっかり忘れています」
「数字や聞き方が変わると、習った問題だと気づきません」
算数について、このようなご相談をいただくことがあります。
説明を聞いている。
例題もノートに写している。
教わった直後の類題にも正解している。
それでも、自分一人では同じ考え方を使えません。
本人も保護者も、
「そのときは分かっていたのに」
と感じます。
しかし、その場で説明を理解できたことと、次の問題でも自分で考え方を再現できることは同じではありません。
指導直後に解けても、身についたとは限りません
先生の説明を聞いた直後には、さまざまな情報が頭に残っています。
どの数字を使ったのか。
どの公式を使ったのか。
最初に何を計算したのか。
次に何を書いたのか。
答えがいくつになったのか。
その記憶が残っている間は、すぐ後の似た問題を解けることがあります。
しかし、覚えているのが数字や手順だけなら、時間がたつと消えていきます。
問題の数字が変わる。
文章の順番が変わる。
求めるものが変わる。
図の向きが変わる。
それだけで、前に習った考え方と結びつかなくなります。
教わった直後に正解したという事実だけでは、その子が何を理解したのかまでは分かりません。
多くの例題指導は「できる子の思考」を前提にしています
一般的な例題指導では、先生が解き方を説明し、その後に似た問題を解かせます。
この方法で学べる子はいます。
しかし、それは例題を見ながら、子ども自身が無意識に大切な部分を見つけているからです。
できる子は、説明を聞きながら、
「今回は、この性質を使った」
「この数字は変わっても、考え方は変わらない」
「次の問題では、ここを見ればよい」
「この順番には理由がある」
「後で自分でもう一度できるようにしておこう」
と考えています。
先生から一つずつ指示されなくても、例題から次の問題でも使える考え方を抜き出しています。
そのため、例題の解き方を見せて類題へ進む指導でも、ついていくことができます。
一方で、すべての子がこの思考を自然にできるわけではありません。
例題から何を学ぶのかを自分で見つけられない子は、目に見える式や数字、答えだけを追います。
同じ説明を聞いていても、頭の中で行っていることが違うのです。
「できる子に通用する方法」が一般的な方法になっています
授業や教材を作る大人の多くは、自分が学習できた側です。
例題を見れば重要な部分を見つけられた。
説明を聞けば、次に何を覚えればよいか分かった。
似た問題との共通点にも気づけた。
そのため、自分が無意識に行っていた思考を、子どもも自然に行うと考えてしまうことがあります。
しかし、できる人にとって当たり前の行動は、学び方が身についていない子にとっては当たり前ではありません。
「例題をよく見ましょう」
「解き方を覚えましょう」
「同じように解いてみましょう」
と言われても、
何を見ればよいのか。
解き方の何を覚えるのか。
何が同じなのか。
どこまで同じようにすればよいのか。
が分かりません。
これまで一般的な学び方として扱われてきたものが、実際には、一部のできる子がついていける方法になっていることがあります。
できない子へ問題を増やす前に、できる子が例題を見ながら頭の中で行っていることを、具体的な言葉にして教える必要があります。
好きなことと同じようには身につきません
好きな習い事や遊びでは、細かく教えられなくても身につくことがあります。
本人が興味を持って見ています。
何度も繰り返します。
少しの違いにも気づきます。
うまくいかなければ、自分からやり方を変えます。
もっと上手になりたいので、人の動きもよく見ます。
このような行動が自然に起こるため、何を覚えるのかを毎回言葉にしなくても身につくことがあります。
しかし、すべての子が学習に対して同じ行動を取るわけではありません。
興味の強い活動と同じように、
「何度か見れば自然に要点へ気づくだろう」
「似た問題を解けば考え方が身につくだろう」
と考えても、そうならない子がいます。
学習では、何を見て、何を理解し、何を覚えるのかを意識して取り組む必要があります。
その意識の向け方自体を教えなければならない子もいます。
短期記憶に残るものだけを覚えています
例題を見たときに、最も目につきやすいのは数字、式、計算手順、答えです。
そのため、学び方が分からない子は、
「8から3を引いた」
「最初に掛け算をした」
「答えは24になった」
という、目に見える部分を覚えます。
一方で、
なぜ引き算を使ったのか。
どの数量の差を求めたのか。
なぜ最初に掛け算をしたのか。
どの性質を使った問題なのか。
という意味は残っていません。
これは、意味のない数字の並びを覚えているのと似ています。
説明直後は記憶に残っているため、同じ形の問題を解けます。
しかし、その記憶が薄れれば解けなくなります。
また、数字や見た目が変わると、同じ考え方を使う問題だと判断できません。
必要なのは、短期記憶へ式の形を残すことではありません。
次の問題でも使える意味を残すことです。
答えが見えると「分かったつもり」になります
例題には、途中の考え方や式、答えが書かれています。
説明を読みながら見れば、内容を理解できたように感じます。
式の流れも追える。
計算の意味も、その場では納得できる。
答えを見れば、間違っていないことも分かる。
しかし、答えが見える状態で理解できることと、何も見ずに自分で考えられることは別です。
例題を読んで、
「分かった」
と感じた時点では、自分で再現できるかどうかは確認されていません。
答え第一主義になっている子は、例題でも答えへ意識が向きます。
答えまで読んで納得すると、その問題の学習が終わったと思います。
どの性質を使ったのかを確認しない。
大切な部分を自分の言葉にしない。
答えを隠して、もう一度解かない。
別の問題で使えるか試さない。
これでは、例題を読んだ時間が、学ぶ時間ではなく答えを確認する時間になります。
例題の指導が最も重要です
問題が変わると解けない子に、類題を何問も解かせればよいとは限りません。
例題から何を学ぶのか分からないまま類題へ進めば、式や手順の形をまねる練習になります。
見た目が同じ問題には対応できても、少し形が変われば使えません。
だから、ときわの塾では、例題の時間を大切にします。
先生が説明を終えることが目的ではありません。
子どもが、
何を覚えるのか。
何を理解するのか。
どの性質を使ったのか。
次の問題では何を見つけるのか。
を整理する時間です。
同じ説明を聞いても、理解するまでに必要な時間は一人ひとり違います。
すぐに要点をつかめる子もいます。
数字や図を一つずつ確認する必要がある子もいます。
自分の言葉で説明して、初めて分かる子もいます。
例題を一斉に説明して、全員を同じ速さで次へ進ませると、何を学ぶのか分からない子が置き去りになります。
できる子の思考を、具体的に教えます
「もっと考えなさい」
「しっかり覚えなさい」
と伝えるだけでは、子どもは何をすればよいのか分かりません。
できる子が無意識に行っている思考を、具体的な質問にします。
「この問題では、どの性質を使いましたか」
「なぜ、この式になりましたか」
「この数字は何を表していますか」
「数字が変わっても残る考え方は何ですか」
「次の問題では、どの言葉や条件を見つけますか」
「この例題から、一つだけ覚えるなら何ですか」
最初から子どもだけで答えられるとは限りません。
先生と一緒に言葉を整理しながら、何を理解すればよいのかを明確にします。
これを繰り返すことで、例題を見るときの視点を身につけていきます。
できる子だけが無意識に行っていた思考を、ほかの子にも使える行動へ変えるのです。
例題を見た後に、考える時間を与えます
例題の説明が終わった直後に、すぐ次の問題へ進むとは限りません。
まず、子どもが何を理解したのかを確認します。
例題を見ながらでなければ説明できないのか。
大切な性質を自分の言葉で言えるのか。
式の数字が何を表しているか分かるのか。
次に何をすればよいか思い出せるのか。
子ども自身が、
「この問題では、これを覚えよう」
「次は、ここを見つけよう」
と考える時間が必要です。
教える側には短く見える時間でも、子どもにとっては、説明された内容を自分の中で整理する大切な時間です。
この時間を個々の子どもに与えずに進むと、説明を聞いたことは残っても、次に使える考え方は残りません。
答えを隠して、もう一度自分で解きます
説明を理解した後は、例題の式と答えを隠します。
そして、同じ問題を自分でもう一度解きます。
説明を読めば分かる状態から、何も見ずに自分でできる状態へ移すためです。
ここで手が止まれば、まだ自分の考え方にはなっていません。
どこを思い出せなかったのか。
どの性質を使うか分からなかったのか。
問題文のどの条件を見落としたのか。
もう一度確認します。
答えを覚えて書けたかどうかだけではなく、なぜその考え方を使ったのかを説明させます。
同じ例題を自分で再現できて、初めて次の問題へ進む準備ができます。
少し変えた問題で、本当に使えるか確認します
例題をもう一度解けても、答えや手順を覚えているだけかもしれません。
そのため、数字や聞き方を少し変えた問題で確認します。
数字だけを変える。
分かっているものと求めるものを入れ替える。
文章の順番を変える。
図の向きを変える。
同じ性質を使う別の場面にする。
見た目が変わっても同じ考え方を使えれば、例題から意味を学べています。
解けなければ、
「最初の問題と同じところは何ですか」
「変わったところは何ですか」
「どの性質は、そのまま使えますか」
と確認します。
何問解いたかではなく、教わった考え方を別の問題でも使えたかを見ることが大切です。
ときわの塾が例題で確認する順番
ときわの塾では、例題を次の順番で学びます。
1.問題文の条件を確認する
数字だけを拾わず、何について書かれ、何を求めているのかを整理します。
2.使う性質や考え方を明確にする
単に何算を使うかではなく、なぜその計算や解き方を使うのかを確認します。
3.例題から覚えることを決める
この問題だけの数字や答えではなく、次の問題でも使う部分を言葉にします。
4.子どもが整理する時間を取る
説明後すぐに進まず、自分が何を理解したのかを考えます。
5.答えを隠して再現する
式や解説を見ず、自分一人でも同じ考え方を使えるか確認します。
6.解き方の理由を説明する
正解したかだけでなく、なぜその考え方になるのかを言葉にします。
7.少し変えた問題で試す
数字や聞き方が変わっても、同じ性質を見つけられるか確認します。
この順番を通して、例題の答えを覚える学習から、考え方を次の問題へ持っていく学習へ変えていきます。
家庭では「分かった?」だけで終わらせないでください
説明を聞いた子に、
「分かった?」
と尋ねると、多くの子は「分かった」と答えます。
うそをついているとは限りません。
説明を見ている間は、本当に分かったと感じているからです。
家庭で確認するときは、
「何を覚えればよい問題でしたか」
「なぜ、その式になりましたか」
「答えを隠して、もう一度できますか」
「数字が変わっても同じ方法を使えますか」
と尋ねてみてください。
答えを隠すとできない場合は、叱る必要はありません。
まだ自分だけで再現できる状態ではないことが分かったということです。
そこから、何を理解できていないのかを確認できます。
ただし、家庭で長時間教え込む必要はありません。
分からない部分を明らかにし、学校や塾で質問できる状態にするだけでも、次の学習につながります。
例題は、答えを知る時間ではありません
教わった直後は解けるのに、問題が変わると解けない。
その原因は、努力や記憶力だけにあるとは限りません。
例題から何を学ぶのか。
どの性質を理解するのか。
何を次の問題へ持っていくのか。
その思考を教えられていないことがあります。
できる子は、それを無意識に行います。
だから、解き方を説明して類題を解かせるだけでもついていけます。
しかし、同じことを自然にできない子もいます。
その子たちには、できる子が頭の中で行っていることを、具体的な言葉と行動にして教える必要があります。
例題の説明を聞く。
覚えることを決める。
使った性質を理解する。
答えを隠して再現する。
理由を説明する。
少し変わった問題で使う。
ここまで行って、初めて教わった考え方が次の問題でも使える力になります。
ときわの塾では、例題を何問終えたかだけを見ません。
教わった考え方を、次の問題でも、自分一人でも使える状態になったかを見ています。
点数を追いかける塾ではありません。
点数につながる行動を育てる塾です。
「説明直後は解けるのに、すぐ忘れてしまう」
「問題が少し変わるだけで、習った考え方を使えない」
そのようなときは、類題の数を増やす前に、その例題から何を学んだのかを子ども自身が説明できるか、確かめることから始めてみてください。

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