分からないのに答えを書く小学生へ|まず「書かない」ことから始める理由
この記事の内容
分からない問題にも、とりあえず数字や言葉を書く子がいます。
一見すると、空欄を残さず頑張っているように見えるかもしれません。しかし、考える前に答えを書く習慣がつくと、問題を読み直したり、分からない言葉を確認したり、解説を聞いたりする機会を失います。
このような子には、すぐに「よく読んで考えよう」と求めるのではなく、まず分からないときには書かないことを教える必要があります。空欄を学習の出発点に変える方法を、ときわの塾が解説します。

「問題を読んでも分からないのに、とにかく何か書きます」
「理由を聞くと、『分からなかったから書いた』と答えます」
「間違いを直すより、空欄を埋めることを優先しています」
算数や国語の学習について、このようなご相談をいただくことがあります。
10問のうち、どうしても分からない問題が1問か2問あり、最後に自分なりの答えを書くのであれば、ある程度は理解できます。
しかし、10問中8問ほどを、問題の意味が分からないまま埋めている子もいます。
答えを書いているため、勉強しているようには見えます。
ところが、何を聞かれているのか、なぜその答えになるのかを尋ねると説明できません。
本人に理由を聞くと、
「分からなかったから書いた」
と答えます。
大人には矛盾しているように聞こえるかもしれません。
しかし、その子にとっての目的が「正しい答えを出すこと」ではなく、「空欄をなくすこと」になっていれば、矛盾していないのです。
「何か書きなさい」の意味が正しく伝わっているとは限りません
大人が子どもに、
「分からなくても、何か書きなさい」
「空欄のままにしてはいけません」
と伝えることがあります。
大人が考える「何か書く」には、本来さまざまな行動が含まれています。
問題を最後まで読む。
習ったことを思い出す。
分かっていることを整理する。
自分なりに考える。
そのうえで、途中式や考えた答えを書く。
大人にとっては、これらが当然の前提になっています。
しかし、子どもも同じ意味で受け取っているとは限りません。
話を正確に聞くことが苦手だったり、知っている言葉が少なかったりする子には、大人が言葉にしていない前提まで理解することが難しい場合があります。
その結果、
「分からなくても、何か書きなさい」
という言葉から、
「考えたことを書きなさい」ではなく、
「正しいかどうかは関係なく、空欄を埋めなさい」
という部分だけを受け取ってしまいます。
空欄を埋めるための「自分だけのルール」が作られます
問題の意味を理解できないまま答えを書くためには、何らかの方法で答えを作らなければなりません。
そこで、子どもは目についた数字や言葉から、自分だけのルールを作ることがあります。
数字が二つあれば足す。
「多い」と書いてあれば足し算をする。
文章に出てきた数字を全部使う。
国語では、本文に書かれている長い文をそのまま写す。
選択問題では、知っている言葉があるものを選ぶ。
前の問題と同じような答えを書く。
これらは、問題の内容を理解して作った式や答えではありません。
しかし、本人はふざけているとは限りません。
分からない問題にも何かを書かなければならないと思い、自分にできる方法で空欄を埋めているのです。
それを繰り返していると、根拠のない自己流のルールが増えていきます。
ときどき偶然正解することもあります。
その偶然の正解によって、本人が「この方法でよい」と思ってしまうこともあります。
空欄を埋めることが、学習を妨げる場合があります
間違った答えを書くこと自体が悪いのではありません。
問題を読み、自分なりに考え、根拠を持って書いた答えなら、間違いから学ぶことができます。
どこで考え違いをしたのか。
どの言葉の意味を取り違えたのか。
どの計算方法を使えばよかったのか。
考えた過程が残っていれば、間違えた原因を一緒に確認できます。
一方で、何も考えずに空欄を埋めた答えには、確認できる考え方がありません。
「なぜ、この答えを書いたの?」
と聞いても、
「分からなかったから」
で終わってしまいます。
さらに、答えを書いたことで本人の中では問題が終わっています。
問題を読み直さない。
習ったことを思い出さない。
分からない言葉を確認しない。
解説を聞こうとしない。
もう一度自分で解こうとしない。
本来、学ぶために必要な行動をしないまま、次の問題へ進んでしまいます。
10問のうち8問をこの方法で埋めているなら、10問に取り組んだように見えても、十分な学習にはなっていません。
問題数を増やすほど、「分からなければ適当に書く」という行動を繰り返すことにもなります。
まずは「分からなければ書かない」ことから始めます
このような子に、
「問題をよく読みなさい」
「もっと考えなさい」
と伝えるだけでは、なかなか行動は変わりません。
なぜなら、「読む」や「考える」という言葉が、本人にとって具体的な行動になっていないことがあるからです。
どこを読むのか。
何を考えるのか。
何を思い出すのか。
分からないときに、次に何をするのか。
そこから教える必要があります。
その前に、ときわの塾では、まず一つの行動を止めます。
分からないまま、根拠のない答えを書かないことです。
これは、いつまでも空欄でよいという意味ではありません。
また、考えても書かなくてよいという意味でもありません。
適当に答えを書くことで問題を終わらせず、自分が分からない状態に気づくためです。
答えを書かなければ、その問題はまだ終わっていません。
そこから初めて、
「何が分からないのか」
「どの言葉で止まったのか」
「どこまでは分かっているのか」
を一緒に確かめられます。
空欄は、教えるべき場所を知らせる大切な情報です
大人は、空欄を見ると不安になることがあります。
何も考えていないように見える。
やる気がないように見える。
少しでも書いたほうがよいように感じる。
しかし、分からない場所が空欄になっていれば、その子に何を教える必要があるのかが見えます。
問題に使われている言葉を知らないのか。
何を聞かれているのか分からないのか。
数字が何を表しているのか分からないのか。
習った解き方を思い出せないのか。
考え方は合っているけれど、答えの書き方が分からないのか。
空欄は、子どもが分からない場所を大人に知らせる情報です。
そこを根拠のない答えで埋めてしまうと、本当に教えるべき場所が見えにくくなります。
大切なのは、空欄をなくすことではありません。
空欄になった原因を見つけ、次に自分でできるようにすることです。
言葉の意味を一つずつ整理します
問題を読んでも分からない子の中には、問題文に使われている言葉の意味を十分に理解できていない子がいます。
漢字を読めることと、言葉の意味が分かることは同じではありません。
文章を声に出して読めても、何について書かれているのかを説明できないこともあります。
この状態で「よく読んで」と繰り返しても、同じ文章を目で追うだけになってしまいます。
そのため、言葉を一つずつ整理します。
「この言葉は、どういう意味ですか」
「この数字は、何の数ですか」
「誰が何をしましたか」
「この問題では、何を聞かれていますか」
「分かっていることは、どこに書いてありますか」
最初からすべてを一人で説明させるのではありません。
子どもが知っている言葉を確認し、知らない言葉の意味を伝え、短い言葉で問題の内容を整理していきます。
分からない言葉が分かるようになれば、文章の意味を捉えられるようになります。
文章の意味が分かれば、ようやく自分で考えることができます。
「書かない」で終わらせず、次の行動を教えます
根拠のない答えを書かないようにするだけでは、学習は進みません。
大切なのは、分からないときに取る行動を置き換えることです。
ときわの塾では、子どもの状態に合わせて、次の行動を一つずつ教えます。
1.問題を最後まで読む
途中に出てきた数字や言葉だけで答えを決めず、何を聞かれているのかまで読みます。
2.分からない言葉を見つける
文章全体を「分からない」で終わらせず、意味の分からない言葉や文を示します。
3.分かっていることを確認する
全部分からないのではなく、どこまでなら分かるのかを一緒に整理します。
4.習ったことを思い出す
似た問題や、以前に教わった考え方を使えないか確認します。
5.分からない場所を伝える
適当な答えで隠さず、「この言葉が分からない」「ここから考えられない」と伝えます。
6.解説を最後まで聞く
答えだけを聞くのではなく、なぜその考え方になるのかを確かめます。
7.自分でもう一度解く
説明を聞いて終わらず、何も見ずに同じ問題を解き直します。
最初からすべてできる子ばかりではありません。
まずは、分からないまま書かない。
次に、分からない言葉を示す。
その次に、説明を最後まで聞く。
一つの行動ができるようになってから、次の行動へ進みます。
習慣を変えるまでに数か月かかることもあります
「適当に答えを書かないようにしよう」
と一度伝えただけで、すぐに変わるとは限りません。
これまで長い間、空欄を埋めることが勉強だと思ってきた子もいます。
問題を見る。
分からない。
何かを書く。
次へ進む。
この行動が習慣になっていると、考えるより先に手が動きます。
説明を始めても、自分の中ではすでに答えを書いて終わった問題なので、聞こうとしない場合もあります。
そのため、問題に取り組むたびに、
「何を聞かれていますか」
「その答えを書いた理由は何ですか」
「どの言葉が分かりませんか」
と確認する必要があります。
読むことや、解説を聞くことを習慣にするまで、数か月かかることもあります。
これは一つの問題の解き方を教えているのではありません。
長く続けてきた学習行動そのものを変えているからです。
行動が変わると、できる問題が増えることがあります
分からないまま答えを書く子が、勉強のできない子だとは限りません。
学ぶ前に、自分で問題を終わらせてしまっていることがあります。
根拠のない答えを書かなくなる。
分からない言葉を確認する。
問題を最後まで読む。
説明を聞く。
教わった方法でもう一度解く。
こうした行動が少しずつ身につくと、それまで学べていなかった子が学び始めます。
学べるようになれば、知っている言葉が増えます。
問題の意味を理解できる場面が増えます。
習った考え方を思い出せるようになります。
その結果、できる問題がどんどん増える子もいます。
必要だったのは、さらに多くの問題を解かせることではありません。
一問から正しく学ぶための行動を身につけることだったのです。
未就学や低学年から伝えたいこと
「空欄を埋めることが正しい」という考え方が身につく前に、分からないときの行動を教えることが大切です。
これは小学校高学年になってから必要になる学習方法ではありません。
未就学や低学年の頃から、
分からないことは悪いことではない。
分からないのに適当な答えを書く必要はない。
分からない言葉は聞いてよい。
説明は最後まで聞く。
教えてもらったら、自分でもう一度やってみる。
ということを伝えていく必要があります。
幼い子は、大人の言葉を大人と同じ意味で理解しているとは限りません。
「何か書きなさい」
「全部埋めなさい」
という言葉を使うときには、その前に何を考え、何を書いてほしいのかまで具体的に伝える必要があります。
家庭では「何か書いたか」より「なぜ書いたか」を見てください
家庭で丸つけをするとき、空欄があるかどうかだけを確認する必要はありません。
答えが書かれていても、
「どうして、この答えにしたの?」
と尋ねてみてください。
子どもが自分なりの理由を説明できるなら、答えが間違っていても考えた過程を確認できます。
反対に、
「なんとなく」
「分からなかったから書いた」
「数字が二つあったから」
と答える場合は、正解か不正解かを確認する前に、問題へ戻る必要があります。
ただし、家庭で長時間教え込む必要はありません。
分からない場所を明らかにし、学校や塾で質問できる状態にするだけでも意味があります。
「空欄を全部埋めなさい」ではなく、
「考えた理由を説明できる答えを書こう」
「分からないところは、分からないまま見せてください」
と伝えるほうが、次の学習につながります。
空欄を埋めることより、空欄から学ぶことが大切です
分からないのに答えを書く子には、まず書かないことから教える必要があります。
適当な答えを書くのをやめる。
分からない状態を見えるようにする。
分からない言葉を見つける。
言葉の意味を一つずつ知る。
問題の内容を整理する。
説明を最後まで聞く。
根拠を持って答えを書く。
この順番を繰り返すことで、空欄は失敗ではなく、学習を始める場所に変わります。
ときわの塾は、空欄を埋めた数だけを見るのではありません。
その子が問題をどのように読み、何を考え、どこで分からなくなったのかを見ています。
点数を追いかける塾ではありません。
点数につながる行動を育てる塾です。
「問題には取り組んでいるのに、学んでいるように見えない」
「分からない問題にも、適当な答えを書いて終わらせてしまう」
そのようなときは、問題数を増やす前に、分からないまま書く習慣を止めることから始めてみてください。

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