「全部分からない」で止まる子へ|分かるところと分からないところを分ける方法
この記事の内容
問題を見ると「全部分からない」と言って止まる子も、確認すると途中まで理解できていることがあります。分かる部分と止まった部分を分け、必要なところだけ学び直す方法を、ときわの塾が解説します。

「問題を見ただけで、『全部分からない』と言います」
「何が分からないのか聞いても、『全部』としか答えません」
「質問しなさいと言っても、何を聞けばよいのか分からないようです」
小学生や中学生の学習を見ていると、このような状態になることがあります。
問題文を最後まで読む前に、
「無理」
「分からない」
「全部教えて」
と言って、手を止めます。
この行動だけを見ると、
「考える気がない」
「すぐに答えを聞こうとしている」
と思われるかもしれません。
しかし、一緒に問題を確認すると、本当にすべてが分からないわけではないことがあります。
問題が何を聞いているかは分かっている。
途中の式までは作れている。
使う公式も知っている。
ただ、その先の一部分で止まっています。
一つ分からないところがあると、問題全体を「全部分からない」と感じている状態です。
「全部分からない」の中身は、子どもによって違う
同じように「分からない」と言っていても、止まっている場所は一人ひとり違います。
例えば、算数の文章題なら、
- 問題文に知らない言葉がある
- 何を求める問題か分からない
- 数字が何を表しているか分からない
- 使う計算方法を選べない
- 式は作れたが、計算できない
- 答えは出たが、単位が分からない
という違いがあります。
国語の記述問題なら、
- 問いの意味が分からない
- 本文のどこを探せばよいか分からない
- 答えの根拠は見つけたが、書き始められない
- 必要な内容を短くまとめられない
- 何を最後の言葉にすればよいか分からない
という違いがあります。
中学生の数学なら、
- 使う公式を思い出せない
- 文字を何に置けばよいか分からない
- 方程式までは作れたが、移項で間違える
- 計算はできるが、答え方が分からない
ということもあります。
「全部分からない」という言葉だけでは、何を教え直せばよいか判断できません。
最初に、止まっている場所を見つける必要があります。
速さの問題を「全部分からない」と言う子
例えば、次の問題があったとします。
ある人が、時速4kmで12kmの道のりを歩きました。かかった時間は何時間ですか。
この問題を見た子が、
「全部分からない」
と言って手を止めたとします。
そこで、すぐに解き方を説明するのではなく、一つずつ確認します。
「何を求める問題?」
と聞くと、
「時間」
と答えられました。
「分かっている数字は?」
と聞くと、
「時速4kmと12km」
と答えられました。
「12kmは何を表している?」
と聞くと、
「道のり」
と答えられました。
ここまで確認すると、問題文をまったく理解できていないわけではありません。
この子が止まっていたのは、
時間を求める式を思い出せない
という一部分です。
そこで、
道のり÷速さ=時間
という関係だけを確認すれば、式を作れる可能性があります。
問題全体を最初から説明する必要はありません。
式は作れているのに「分からない」と言うこともある
別の子は、同じ速さの問題で、
12÷4
という式を書けているかもしれません。
それでも、
「分からない」
と言って止まります。
確認すると、
「12÷4の計算に自信がない」
「答えに何時間と書けばよいか分からない」
という場合があります。
式を作るところまではできています。
この子に速さの公式を最初から説明すると、すでに分かっている内容をもう一度聞かせることになります。
説明が長くなり、本人も、
「やっぱり全部分かっていなかった」
と感じるかもしれません。
必要なのは、できている部分を確認し、止まった場所だけを学び直すことです。
「どこが分からないの?」だけでは答えられない
「全部分からない」と言う子に、
「どこが分からないの?」
と聞いても、答えられないことがあります。
自分で分からない場所を整理できるなら、最初から「全部分からない」とは言っていないからです。
そのため、最初は質問を小さくします。
算数や数学なら、
- 何を求める問題か分かる?
- 分かっている数字はどれ?
- その数字は何を表している?
- 使えそうな公式はある?
- 式はどこまで作れた?
- 計算のどの行から止まった?
国語なら、
- 問いは何を聞いている?
- 理由を答える問題?気持ちを答える問題?
- 本文のどの辺りに書かれていそう?
- 答えに使えそうな言葉は見つかった?
- 最後はどのような言葉で終わればよい?
と、一つずつ確認します。
子どもに「分からない場所を説明して」と求めるのではなく、先生の質問によって、できている部分と止まった部分を分けます。
最初に「できているところ」を確認する
「全部分からない」と言う子には、分からない部分だけでなく、できている部分を言葉にして確認します。
例えば、
「何を求める問題かは分かっているね」
「使う数字は見つけられているね」
「式を作るところまではできているね」
「本文から答えの根拠は探せているね」
と伝えます。
これは、根拠なく褒めることではありません。
実際にできている行動を確認しています。
問題の一部でもできていると分かれば、
「全部分からない」
から、
「ここまでは分かるけれど、この先が分からない」
へ変えられます。
直す場所が一つに絞られると、問題全体に対する不安も小さくなります。
全部を最初から教えると、分かる部分まで受け身になる
子どもが「全部分からない」と言うたびに、先生や保護者が最初から最後まで説明すると、すでに分かっている部分も大人が進めることになります。
問題文を大人が読む。
使う数字を大人が選ぶ。
式を大人が作る。
子どもは最後の計算だけをする。
これで答えが出ても、一人で解けたことにはなりません。
また、「全部分からない」と言えば、最初から説明してもらえるという学習になることもあります。
すぐに全部を教えるのではなく、
「ここまでは一人でできる」
という場所まで本人に進めてもらいます。
そして、止まった部分だけを説明します。
分かるところまで、自分で進める
問題の一部が分からなくても、できるところは残っています。
そこで、
分かるところまで書いてみよう
と伝えます。
算数の文章題なら、
- 求めるものに線を引く
- 分かっている数字を囲む
- 数字の意味を書く
- 図に分かる条件だけ書く
ところまで進められるかもしれません。
国語なら、
- 問いの種類を確認する
- 本文から関係がありそうな箇所を探す
- 答えに使えそうな言葉へ線を引く
ところまで進められるかもしれません。
中学生の数学なら、
- 問題に書かれている条件を書く
- 使えそうな公式を書く
- 途中まで式を作る
- 最初に分からなくなった行へ印を付ける
ことができます。
正解まで進めなくても構いません。
どこまで一人でできたかが分かれば、質問する内容も見えてきます。
質問は「全部教えて」から変えていく
最初は、
「分かりません」
「全部教えてください」
としか言えなかった子も、止まった場所を整理する経験を重ねると、質問の仕方が変わります。
例えば、
「時間を求める問題なのは分かりますが、使う式が分かりません」
「式は作れましたが、この計算から分かりません」
「本文の場所は見つけましたが、35字にまとめられません」
「最初の一行は分かりますが、次に何をすればよいか分かりません」
と伝えられるようになります。
このような質問ができれば、先生も必要な部分だけを説明できます。
説明が短くなり、子どもが自分で考える部分も残せます。
質問する力とは、分からないと口にするだけではありません。
分かるところと分からないところを分け、止まった場所を伝える力です。
「そんなことも分からないの」と言わない
大人には簡単に見える部分で止まっていると、
「そこが分からないの?」
「前にも教えたでしょう」
と言いたくなることがあります。
しかし、分からない場所を伝えたときに驚かれたり、責められたりすると、子どもは再び分からないことを隠すようになります。
「全部分からない」と言えば、細かい弱点を伝えずに済みます。
そこで、止まった場所を話せたときは、
「そこから分からなくなったんだね」
「では、その部分を確認しよう」
と受け止めます。
分からないこと自体を問題にするのではなく、直す場所が分かったことを学習の前進として扱います。
答えを教える前に、最初に止まった場所を探す
間違えた問題には、最初に違った場所があります。
問題文の意味を取り違えた。
求めるものを勘違いした。
数字の関係を逆にした。
公式を間違えた。
途中計算で符号を間違えた。
単位を付け忘れた。
最終的な答えだけを見ると、すべて間違っているように見えます。
しかし、最初に違った場所より前は、正しくできている場合があります。
そこを見つければ、全部をやり直す必要はありません。
ときわの塾では、答えだけを直すのではなく、
「最初にどこで違ったのか」
を確認します。
最初の間違いを直し、その続きからもう一度自分で進めます。
類題で、同じ場所を一人で越えられるか確認する
止まった場所を説明して、その問題が解けただけでは、まだ身についたとは判断できません。
先生の説明が残っているため、同じ問題なら答えを覚えていることもあります。
そこで、数字や言い方を少し変えた類題に取り組みます。
例えば、時間を求める式で止まっていたなら、数字を変えた別の速さの問題を出します。
その問題でも、
- 何を求めるのか確認する
- 分かっている数量を整理する
- 時間を求める式を選ぶ
- 一人で計算する
ことができるかを見ます。
同じ場所を自分で越えられれば、学び直した内容を使えています。
再び止まれば、どこがまだ整理できていないのかを確認します。
ご家庭では、解き方を教えすぎなくてよい
お子さんが「全部分からない」と言うと、保護者の方が最初から説明しなければならないと感じるかもしれません。
しかし、ご家庭ですべての解き方を教える必要はありません。
最初に、次のように確認するだけでも構いません。
- 何を聞かれているかは分かる?
- 分かっているところはどこ?
- どの行から止まった?
- 先生に聞くなら、何を聞けばよい?
答えや解き方を教えるのではなく、止まった場所に印を付けておきます。
その状態で、塾や学校の先生に質問できれば十分です。
保護者の方が先生役まで担うと、親子ともに負担が大きくなります。
ご家庭では、分からない場所を残し、質問する準備をするところまでで構いません。
「全部分からない」から「ここが分からない」へ
問題を見て「全部分からない」と言う子も、本当に何も分かっていないとは限りません。
一つ止まったところがあるために、問題全体を解けないと感じていることがあります。
そのときに必要なのは、問題の最初から最後まで説明することではありません。
何を求める問題か確認する。
分かっている条件を探す。
できるところまで自分で進める。
最初に止まった場所を見つける。
その部分だけを学び直す。
そして、別の問題でも同じ場所を一人で越えられるか確かめる。
この経験を繰り返すことで、
「全部分からない」
という言葉は、
「ここまでは分かるけれど、ここから分からない」
へ変わっていきます。
分からない場所を見つけることは、勉強ができない証拠ではありません。
次に何を学び直せばよいかを明らかにする行動です。
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