教わった方法を使わず自己流に戻る子へ|同じ間違いを繰り返す理由
この記事の内容
教わった直後は正しい方法を使えても、次の問題では自己流に戻り、同じ間違いをする子がいます。本人に無視している自覚がない理由と、教わった方法を再現する練習を、ときわの塾が解説します。

「先生に教えてもらったときは、できていました」
「同じような問題なのに、次はまた以前のやり方へ戻っています」
「何度注意しても、問題文を読まずに式を作ります」
「途中式を書くように言われても、次の問題では書きません」
このようなお子さんは、先生の説明をまったく聞いていないとは限りません。
説明された問題では、教わった方法を使って正解できることもあります。
ところが、先生が隣を離れたり、数字や言い方が少し変わったりすると、以前のやり方へ戻ります。
本人には、先生の指示を無視しているつもりがない場合もあります。
教わった方法を、新しい自分のやり方として身につける前に、長く続けてきた行動が出ているのです。
教わった直後の問題だけは解ける
例えば、算数の文章題で、数字だけを見て計算方法を決める子がいたとします。
問題文には、
赤いテープは12cmです。青いテープは、赤いテープより5cm長いです。青いテープは何cmですか。
と書かれています。
先生と一緒に、
- 何を求める問題なのか
- 12cmは何の長さなのか
- 「5cm長い」とは、どのような関係なのか
を確認します。
その後で、
12+5=17
という式を作ります。
この問題では、教わった手順を使って正解できます。
ところが、次の問題になると、問題文を最後まで読まず、並んでいる二つの数字を見ただけで式を作ります。
「さっきと同じように、何を求めるのか確認しよう」
と伝えると、本人は、
「分かってる」
と答えることがあります。
しかし、分かっていることと、実際にその行動を使うことは別です。
本人は、自己流に戻っていることに気づいていない
大人から見ると、
「せっかく教えてもらったのに、なぜ同じことをするのだろう」
と感じます。
しかし、子ども自身は、以前の方法へ戻ったことに気づいていない場合があります。
問題を見る。
数字を探す。
足し算か引き算かを決める。
すぐに式を書く。
この行動を何度も繰り返してきた子にとっては、考える前に自然に出る手順になっています。
新しく教わった、
問いを確認する
数字の意味を整理する
数量の関係を考える
その後で式を作る
という手順は、まだ意識しなければ使えません。
先生が隣で声をかければできます。
しかし、一人になると、意識しなくてもできる以前の方法へ戻ります。
そのため、「もう教えた」「本人も分かったと言った」というだけでは、行動が変わったとは判断できません。
途中式を書かず、頭の中だけで計算する
中学生の数学でも、同じことがあります。
例えば、負の数を含む計算で何度も符号を間違える子に、途中式を一行ずつ書くように教えたとします。
先生と一緒に解くときは、
-8+3
=-(8-3)
=-5
と、途中の考え方を残します。
どこで符号が決まったのかを確認できるため、正解します。
ところが、次の問題では途中式を書かず、頭の中だけで計算して答えを書きます。
そして、再び符号を間違えます。
本人は、
「途中式を書かなくても分かると思った」
「今回は簡単だと思った」
と話すかもしれません。
しかし、間違いが続いている間は、頭の中だけで処理する方法が本人に合っているとはいえません。
途中式を書く目的は、ノートをきれいに見せることではありません。
- どの順番で計算したか
- どこで符号を間違えたか
- 最初に違った場所はどこか
を、自分でも確認できるようにするためです。
国語では、問いを確認せず本文の頭から書く
国語の記述問題でも、教わった方法を使わずに以前のやり方へ戻ることがあります。
例えば、理由を答える問題では、
- 問いが何を聞いているか確認する
- 答えの述語を決める
- 本文から必要な根拠を探す
- 必要な内容だけを答案に入れる
という手順を教えます。
先生と一緒なら、問いに合う答えを作れます。
しかし、一人になると、本文の中で関係がありそうな場所を見つけ、頭から長く書き始めます。
その結果、
- 問いに合う述語で終わっていない
- 必要な理由が一つ抜けている
- 不要な説明で字数を使い切る
- 本文の言葉を並べただけで意味が通らない
という答案になります。
この場合も、記述問題の解き方を知らないとは限りません。
教わった手順を、次の問題で使えていないのです。
正しい方法より、慣れた方法のほうが楽に感じる
教わった方法を使うには、これまでしなかった行動が必要になります。
問題文を最後まで読む。
問いへ線を引く。
図を書く。
途中式を残す。
根拠となる部分を探す。
答えを書いた後に問題文へ戻る。
慣れるまでは、どれも面倒に感じます。
以前の方法なら、すぐに式や答えを書き始められます。
正しい方法よりも、長く続けてきた方法のほうが速く、楽に感じるのです。
しかし、速く答えを書き始めても、同じ間違いを繰り返していれば、結果として時間がかかります。
問題を解く。
間違える。
説明を受ける。
正しい答えを書く。
次の問題で同じ間違いをする。
この繰り返しになります。
自己流がすべて悪いわけではない
自分で考えた工夫や、本人に合った解き方が悪いわけではありません。
教わった方法より分かりやすく、別の問題でも正しく使える方法を自分で見つけることもあります。
ただし、その方法が有効かどうかは確認する必要があります。
- なぜ、その方法で解けるのか説明できるか
- 数字や言い方が変わっても使えるか
- 同じ間違いを繰り返していないか
- 途中の考え方を後から確認できるか
- 偶然、答えだけが合っているのではないか
ここを確認せずに、
「自分はこのやり方のほうがよい」
と判断すると、間違いの原因となっている方法を続けることがあります。
まずは教わった方法を正確に使えるようにする。
その後で、自分に合う工夫を加える。
この順番が必要です。
正しく真似ることは、考える力を奪わない
「教わった通りに解かせると、自分で考えなくなるのではないか」
と思われることがあります。
しかし、勉強が苦手な子の中には、考えるための手順自体を知らない子がいます。
文章題を見たら、何を求めるのか確認する。
条件を図へ書く。
分かっていることと分からないことを分ける。
使えそうな方法を試す。
進めなければ別の方法を考える。
こうした行動は、すでにできる子にとっては当たり前です。
そのため、問題集の解説には、答えへ至る式は書かれていても、
「最初にどこを見たのか」
「なぜ、この条件を先に使ったのか」
までは書かれていないことがあります。
勉強が苦手な子には、その省かれた部分を見せる必要があります。
先生の考え方を見て、同じ手順を自分でも使ってみる。
正しく真似られるようになってから、少しずつ一人で選べるようにする。
正しく真似ることは、考える力を奪うのではなく、考えるために使える方法を増やす過程です。
「分かった?」ではなく、次の問題で確認する
説明後に、
「分かった?」
と聞くと、多くの子は「分かった」と答えます。
説明を聞いた直後なので、本当に分かったと感じていることもあります。
しかし、確認したいのは返事ではありません。
次の問題で、教わった方法を使えるかどうかです。
例えば、文章題で図を書く方法を教えたなら、次の問題では先生から「図を書いて」と言わずに取り組ませます。
そのとき、
- 問いを確認したか
- 必要な条件を図へ書いたか
- 数字の意味を整理したか
- 図を使って式を作ったか
を見ます。
自分から同じ手順を使えれば、教わった方法が少しずつ身についています。
以前の方法へ戻れば、まだ声かけや練習が必要です。
改善する行動を一つに絞る
自己流に戻る子へ、一度に多くのことを求めると、何を直せばよいか分からなくなります。
「問題文を読みなさい」
「途中式を書きなさい」
「字を丁寧に書きなさい」
「見直しもしなさい」
と同時に伝えても、次の問題ではすべて元へ戻ることがあります。
そこで、今の間違いに最も関係している行動を一つに絞ります。
例えば、数字だけを見て式を作る子なら、
式を書く前に、何を求める問題か囲む
という行動だけを確認します。
途中式を省いて符号を間違える子なら、
答えを書く前に、一行だけ途中式を残す
ことから始めます。
記述問題で本文の頭から書く子なら、
答案を書く前に、問いに合う最後の言葉を決める
ことを確認します。
改善した行動を使って正解できれば、
「問題文を読んだから解けた」
「途中式を残したから間違いを見つけられた」
と、その行動が役に立った事実を伝えます。
先生がいなくても使えるまで繰り返す
先生に言われたときだけ正しい方法を使う状態では、まだ身についたとはいえません。
最終的には、
- 先生に声をかけられなくても使う
- 数字が変わっても使う
- 問題文の言い方が変わっても使う
- 次の日にも使う
- テストでも使う
という状態を目指します。
そのためには、一度できただけで終わらず、類題で繰り返し確認する必要があります。
ただし、同じ問題を何度も覚えるまで解くのではありません。
数字や聞き方を変えた問題で、教わった行動を自分から使えるかを見ます。
使えなければ、もう一度どこで元の方法へ戻ったかを確認します。
使えたら、その行動によって何が変わったかを本人と確かめます。
同じ間違いを繰り返すときは、解き方より行動を見る
同じ内容を何度も教えているのに間違えると、
「まだ理解できていない」
「もっと問題を解かせなければならない」
と考えられることがあります。
しかし、解き方を知らないのではなく、教わった方法を使わずに以前の行動へ戻っている場合があります。
この状態で問題数だけを増やすと、間違いにつながる自己流を繰り返し練習することになります。
確認したいのは、
- 説明を聞いた問題では、どのように解いたか
- 次の問題では、どの行動が変わったか
- どこで以前の方法へ戻ったか
- 教わった方法を使えば、一人でも解けたか
- 別の問題でも再現できたか
という点です。
教わった方法を覚えているかではなく、実際の問題で使っているかを見ます。
自己流を頭ごなしに否定する必要はありません。
ただし、同じ間違いを繰り返しているなら、その方法は一度見直す必要があります。
先生の考え方を正しく真似る。
次の問題でも同じ方法を使う。
その方法で自分にも解けたと確認する。
この積み重ねによって、教わった方法が少しずつ本人の学び方になっていきます。
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